第5章

Turii
『神樹トゥーリと星の民』


Turii

遥か昔にリスタチアが発掘され、
古代8種族から様々な新しい力を呼び起こしている時
星は乱れたエネルギーのバランスを保つ為、
自らの力により孤島トゥーリに一本の大樹を生んでいた。
そしてそこには大樹に寄り添いながら、
リスタチアや種族戦争とは無縁に生きてきた者達――星の民がいた。
星の民はクオリアや性差をはじめ、
変異や混沌の生む要素を一切排除するという独自の進化を遂げ
自らの人口も適正に保ち、
大樹と共にリスタチアの力に反作用する調和の力を無意識的に形成していた。
やがて起きた種族戦争により大地が大きく荒廃した時であっても
大樹と星の民が折りなすトゥーリの調和の力は
混沌の力を徐々に打ち消し星が息絶える事は無かった。

だが、星が望んだこの大きな想いはある時突然断ち切られてしまった――。


第5章『神樹トゥーリと星の民』

1年半に一度行われる流転日を迎えたトゥーリ島では、星の民達により流転の儀式が行われていた。
誰もその意味など知らず、その意味を考える事も無い。10人の体内に刻まれた遺伝子がそうさせるのだ。

マルクトは流転する者として自然に還り、新たなケテルを生む――。
星の民は1000年以上そうやってトゥーリの樹と共に、星に内在するエネルギーの流れを厳守しているのだ。
一連の歌と踊りが終わるとマルクトは他の9人が見守る中、水の中へ静かに入って行った。

だが――突如としてマシノワからやって来た青年クカルによって儀式は中断されてしまう。
クカルはサザラギ機関に所属し、前人未踏であったこの島に眠るであろう古代遺産の発掘目的で
上陸していた。その探索中に水の中で死にゆくマルクトを発見し、自らの正義感により助けてしまったのだ。
安堵の表情を浮かべるクカルとは対照的に、マルクトは何が起きたか理解する事ができず虚ろな表情を
浮かべていた。混沌を生むクオリアを持たないその体は、流転し循環するトゥーリの調和した因果律が
全て支配しているからである。

マルクトはマシノワに連れ去られ、残された9人の星の民は乱れた法則を元に戻す術を持たず
やがて滅んでしまった。こうして1人の青年の些細な思いで断ち切られた調和の環は、星の因果律を
大きく乱す結果となった。
後にクオリアが徐々に目覚めたマルクトは流転すべきであった自分が存在している事により
この星に大きな混沌を招いている事に気付き自己の存在を無に帰そうとするがもはや乱れた因果律では
マルクトの存在を消すことができなかった――。

ゼクトバッハ叙事詩 第5章『神樹トゥーリと星の民』より


http://music.geocities.jp/zektmatome/m/
Zektbach叙事詩 まとめ